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四月、入学式の朝。
僕は未だに布団にくるまったまま動けずにいた。
「学校行きたくない……」
学校が中学から高校に変わっても、僕自身は何も変わっていない。
どうせまた虐められるんだと思うと、学校へ行くどころか布団から出るのも嫌になる。
もう一生布団から出たくないよ……。
春休みも終わり今日から学校が始まるのが苦痛で堪らない。
その所為で昨日はろくに眠れなかったくらいだ。
「学校イヤだ……お腹痛くならないかな……」
「全く、相変わらず軟弱なヤツじゃのう」
何処かで聞いた事あるような、おじいちゃんの声。
え、これって……。
「夢じゃないの!?」
ガバッと勢い良く起き上がり布団から顔を出すと、学習机の上に体長15センチ程の人影が見えた。
「久しぶりじゃのう、トナカイ君」
……いや、まだ僕はトナカイになってないんだけど。
目の前に居たのは去年のクリスマスに僕をトナカイにしてくれると言っていたサンタおじいちゃん。
但し今日はサンタ衣装じゃなく、真っ赤なカーディガンに赤いズボンを着ていたけど。
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