甘い時間。

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「また人生相談?」 「違うのじゃ」 言えるわけがない。 フッとあたしを横目で見たかと思うと、まだ少し濡れてる前髪に触れた。 「髪、伸びたな」 「生きてるからの」 「まあ、前が長すぎたもんな。お化けみたいだったな、あれ。そんくらいでいいんじゃねーの?」 「おばけだと?」 誉められてる気がしないけど。 「つうかなんかお前、最近、色気づいてねーか?」 「はっ?」 「なんか前より爪とか気にしてるから」 そう言って、指先を見た。 「そう?」 「前なんか毛とか密林だったろ?」 「なにそれ?剃ってたのじゃ。何処見ておる!」 思わず足を蹴ってしまった。 「そりゃ、オラウーのことは心配だからよく見てるけど」 と軽く笑いながら言った。 「心配?」 「可愛いから心配」 あたしの目を見ながら言った。時が凍ったみたいに固まってしまった。
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