1096人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
入学して間もない頃、わたしが初めて母にそのことを告げたのは、いつもの慌ただしい朝食の時間だった。
「祐希、早くしないとまた班長がピンポーンて迎えに来ちゃうわよっ」
「わーかってるってー」
母にせかされても、ご飯をひとくち頬張っては、テレビに観入って箸を止めてしまう祐希。それに怒って、リモコンでテレビの電源を切る母。
ピンポーン、というインターホンの音に、母がカーテンを開け、外を見る。
硝子戸を開け、ごめんね、今行くから、と声をかける母の後ろで、口をもぐもぐさせながら慌ててランドセルを背負い、廊下に飛び出して行く祐希。
いつも通り、何も変わらない、平和な日常。
「まったくもう、毎日毎日、同じことの繰り返しなんだからっ」
一人でぶつぶつと文句を言いながら、母が祐希の使った食器を重ね始める。
それも、いつもと同じ。何も変わらない…。
わたしは、カチャン、と箸を置いた。
最初のコメントを投稿しよう!