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「わたし、…男の人と付き合ったこともないし、好きになったこともないので…」 「…そう」 「ごめんなさい…」  春山先生はファイルを閉じ、脇に置いた。  そして、膝の上に肘をついて手を組み、前かがみになってわたしの顔を覗き込む。 「俺は、…向いてると思うけどな」  顔を上げると、思ったよりも顔が近くて、ドキンと心臓が反応した。 「現国の奈津川先生に、見せてもらったんだ。君の書いた、樋口一葉が半井桃水に宛てた恋文の、解釈」 「え」 「びっくりしたよ。……すごく、良かった」  春山先生はそう言って、ふわりと微笑んだ。  …わ…。  …なんて、優しい笑顔…。  暖かく、わたしを包み込む、…何だろう。…まるで、ぽかぽかの日差しのような…。
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