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「あいつが、あんな風に泣くなんて、…意外だった」
「…そうですね。皆も、貰い泣きしちゃって…」
「俺も、危なかったけどね。つられて泣くところだった」
「ええっ。…嘘…っ。…ほんとに?」
目を見開いて驚くわたしを、先生はじろ、と見て、
「…驚きすぎじゃない?」
「だって…」
…先生が、貰い泣き…。
ひょっとして、…世間ではその現象の事を『鬼の目にも涙』と呼ぶんじゃ…。
先生の顔を見つめながら懸命に泣き顔を想像してみるけれど…全く画が思い浮かんで来ない。
「…先生って、泣いたこと、あるんですか」
「…お前さ…。俺のこと、何だと思ってんの」
先生は少し不機嫌な顔のまま、頬杖をついて投稿用紙に目を落とした。
…やば。…拗ねちゃったかな…。
わたしが顔色を窺っていることに気付いているはずなのに、…先生は全く反応せずに、知らんぷりで長いまつ毛を伏せている。
…うわ。…思いっきり拗ねちゃってる…。
ここは、長引く前に、早めに謝っておいた方が…。
「…椎名」
突然呼びかけられ、わたしはビクッと背筋を伸ばした。
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