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コウの指が浴衣の襟元からゆっくりと中に入ってくる。
と同時に聞き覚えのある着信音が聞こえた。
…私の携帯の着信音だ。
コウもその着信音にビクッとするとパッと身体を離して私を見た。
その目は本当に驚いているようで私はバツが悪く感じる。
「携帯?」
「…うん。私の携帯。電話が鳴ってる」
私はキッチンのテーブルに置いてある携帯を指差しながら言った。
携帯は着信音と共に点滅していて、まるで私を呼んでいるように見える。
でも私は出ようとしなかった。
だって…せっかくいい感じだったのに…。
それにコウに悪い。
でもコウはもうその気がなくなったのかあっさりと「出れば?」と言った。
その顔はいつものコウで呆れているようにも見える。
「あ…うん。ごめん」
私は申し訳なさそうに言うと立ち上がりキッチンへと向かった。
そしてテーブルに置いてある携帯を手にした。
携帯のディスプレイには「華ちゃん」と表示してある。
…なんでこんな時に。
全く…華ちゃんは…。
私は「はぁ」と溜息をつくと通話ボタンを押した。
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