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「あの時はすいませんでした」
会社の給湯室で華ちゃんは私と二人っきりになると早速謝罪してきた。
「あの時って?」
ここでの謝罪はきっと花火大会をドタキャンした事だろう。
この前電話で謝っているんだからもういいのに。
だから私は何の事かわからないフリをした。
「花火大会の日ですよ。私が電話した時お取り込み中だったんですよね?」
華ちゃんは興味津々といった感じの顔をしながら言った。
「えっ?」
私は華ちゃんの言っている意味がわからず眉間にしわを寄せてしまう。
ドタキャンの事じゃないの?
お取り込み中…って。
あ…思い出した。
そうだあの日の夜、華ちゃんから電話があった時にコウが首筋とかうなじにキスから変な声を出したんだ。
華ちゃんはその事を言っているんだ。
…もう華ちゃんったら。
私は「はぁ」と小さく溜息をつくと、とびきりの笑顔で言った。
「さぁどうったんだろうね。想像にお任せするわ」
「うわっ。否定しないんですね。余裕だなぁ」
華ちゃんは私の言葉に目を丸くして驚いた顔をしている。
きっと否定すると思ったのだろう。
否定なんてしないわよ。
だってその通りだから。
私はそんな華ちゃんを見ながら心の中で「ふふっ」っと笑った。
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