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「ただいま」
俺はリビングのドアを開けるなり小さな声で言った。
誰もいない静かなリビングに俺の声だけが響く。
返事がないのはわかっている。
さっきミウからメールがきていたから。
ミウは知らないと思うが俺はいつも帰るとつい「ただいま」と言ってしまう。
他人が見たら変だと思うが、俺はこのままでいいと思う。
俺はもう一人ではないから。
この家にはミウがいて、今頃俺のベットで眠っているから。
俺は鞄をテーブルに置くと携帯を取り出した。
そしてネクタイを緩めながらさっきミウから来たメールを見る。
『おやすみ』
それは短い内容だが俺はどこか嬉しく感じて「ふふっ」と顔が緩んでしまう。
…ミウらしいな。
ミウは幼い頃からあまり多くは語らない奴だった。
だからベタベタ甘える事もない。
メールの文章だけでもミウらしさをよく感じる。
「さてと行ってみますか」
俺は携帯をテーブルに置くと自分の部屋へと向かった。
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