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だってその人は何かを探しているように見えたから。
私が一礼すると視線を他に移して辺りをきょろきょろと見ていたから。
女子トイレの前にまで探しに来るなんてよっぽど大切なものなんだろう。
だからもし役に立てられるならと思い、私はその人に声をかけた。
「あの…」
「はい?」
その人は私に声をかけられた事に驚いているのか不思議そうな顔をした。
「何か探しものですか?」
「えっ?ああ…ちょっと人を探していて」
「人?」
「一緒にいたはずなのに逸れてしまったみたいで、こっちに来たかなって思って」
私はその言葉で探している人が女性だとわかった。
だって男子トイレは全く逆の方角にあるから。
まぁ確かにこんなにカッコいい人、彼女がいたっておかしくない。
だからって女子トイレの前まで探しに来るなんてね。よっぽど好きなんだろう。
でもこの人が一生懸命探す彼女はどんな人なんだろう?若くて可愛い子なのかな?
あーなんかいいね。ここまで想われるっていいよね。
私はそう思うと微笑ましくなり笑顔で言った。
「ここにはいないと思いますよ。私一人しかいなかったから」
「そうですか。じゃあ他を探します」
その人は笑顔でそう言うと私に一礼をしてこの場から離れて行った。
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