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結婚パーティ会場に戻るとコウが一人で座ってシャンパンを飲んでいた。
その顔はいつもの無表情で何を考えているのかわからない。
…もしかして待たせちゃったかな?
コウを一人にさせてしまったかと思うと申し訳なくなり私は進む足を速め、そして後ろから声をかけようする。
「コ…」
「小林くん!」
私が声をかけようとすると一人の女性のコウの名前を呼ぶ声が聞こえた。
…えっ?
その声に私は驚き最後まで言えず、進む足を止める。
コウの目の前には数人の男女が立っていた。
「おお。久しぶり」
コウの後姿から聞こえる声から知り合いだというのがわかった。
見た感じからしてたぶん大学の友人だろう、久しぶりの再会に皆喜んでいる感じだ。
私は少し離れた所に座りコウ達を見ていた。
きっと久しぶりだから話す事も多いのだろう。
まるで学生時代に戻ったかのようにおちゃらけながら、ここまで笑い声が聞こえる位大きな声で楽しそうに話している。
私はぼんやりと見ながらあの中に入って行く事に抵抗を感じた。
…だってあんなに楽しそうに話していると中に入るのはできないよ。
それにコウに声をかけた女性…ずっとコウを見ているし結構仲良さそうな感じだ。
何かある度に腕や肩に触っているし。
そう思うと心の片隅に小さな嫉妬がポッと湧いてきた感じがした。
なんか感じ悪い。
…ってああヤダヤダ。
友達との久しぶり再会なのにこんな気持ちになる自分が嫌だ。
ちょっと気持ちを覚ましてこよう。
だから私はウェイターからシャンパンを受け取るなりグイッと一気に喉に流し込むと部屋をあとにした。
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