1323人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
「でも佐々木さんだっけ?すごく幸せそうだね。もうすぐ子供も生まれるみたいだし」
「そうだな。あいつら早く子供欲しいって言ってたから良かったよ」
コウはそう言うと「ふっ」と微笑む。
きっと友人のオメデタが自分の事の様に嬉しいのだろう。
その微笑む顔から子供が嫌いなようには到底見えない。
たぶん…コウも子供欲しいよね?
私はそんなコウを見ながら子供の事を聞いてみようと思った。
「コウは?」
「ん?」
コウは不思議そうな顔をするとテレビから視線を私に移した。
さっきまでずっとテレビを見ていたのに急にこっちを向くなんて…。
何か言いづらい…けど聞いてみたい。
だから私は一呼吸開けてから言った。
「子供欲しい?」
「えっ?」
コウは驚いた声で言うと困った顔をした。
その顔から何を考えているのかわかってしまった。
ああ…そうなんだ。
私はそんなコウを見ながら自分の顔が硬直しているのを感じていた。
まるで心臓を抉り取られるような、谷底に突き落とされたような絶望感がじわじわと広がっていく。
…コウは子供が欲しくないんだ。
最初のコメントを投稿しよう!