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「あ…ごめん。そうだよね…あはは」
私は動揺を隠すように明るく言ったつもりだけど、震える声を抑える事は出来なかった。
コウはそんな私の様子を察したのか弁明するように手を横に振った。
「いや、そうじゃなくて」
きっと私がショックを受けている事に気づいているのだろう。
でも今の私はそんな余裕が無くてコウを気遣う笑顔も引きつってて笑顔にならない。
だから聞こえない位に小さな声で「…うん」と頷いた。
するとコウは真剣な表情をすると私を真っすぐ見ながら話し出した。
「俺さ…親が小さい頃に死んじゃっただろ。それからずっと祖母ちゃんと二人だったから普通の家族って言うのがよくわからないんだ」
「…」
「だからこんな俺が親になっていいのかって、正直自信がないんだ」
コウはそう言うと辛そうな顔をした。
そんなコウを見ていると胸がきゅっと締めつけられるように切なくなっていく。
…不安なんだね。
両親との記憶が幼いころで止まってしまっているから。
親として子供を育てる自信がないんだ。
でも理由は違うけど自信がないのは私だって同じだ。
年齢的には大人と呼べる歳だけど精神的にまだ子供だし、そんな私が子供を育てる自信なんてない。
だから一緒に育っていきたい。
成長していきたい。
子供もコウも。
そして私も。
「…コウ。そんな事ないよ」
私はコウを思いっきりギュッと抱きしめた。
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