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私はコウの言葉に慌てて下を向き自分の格好を見た。
その瞬間、どうしてこの格好で来てしまったのかと後悔する。
「あ…」
もこもこ素材の淡いパステルカラーのルームウェアに黒のダウンコートを羽織り。
洗いたての濡れた髪を軽くまとめて、顔はもちろんスッピン。
家の中なら問題ないが外でさすがにこの格好は年齢的に不味い。
きっとこの姿、身内以外は私だと気づかないだろう。
…ヤバい。メールが来たからそのままの格好で来ちゃった。
「ミウらしい」
「何それ?」
「そんなに俺に会いたかった?」
コウは顔を近づけながら言った。
カッコいい顔が近くにあると思うとドキンとするが、意地悪なコウの顔を見ていると否定したくなる。
そりゃあ会いたかったに決まっているけど、なんか癪に障る。
私は心の中を見抜かれたくない思いから下を向きながら言った。
「そ…そんな事ない」
「ふーん」
そんな私の言葉にコウは少し離れて白けた顔をした。
コウのその瞳は疑っているようで。
その口元は何か言いたそうで気になった。
「ふーんって何よ」
「別に。さっさと帰ろうぜ」
コウはそう言うと私の手をぎゅっと繋ぎ引っ張るように歩き出した。
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