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「…はい」
「ダンナさんからは?話したそうな雰囲気ある?」
「いや…特に何も」
話したそうな雰囲気も何も寝顔しか見てないから。
起きているコウを見てないから。
私が答えると早坂さんは腕を組み「そっか…うーん」と何かを考えているようだ。
そして視線を変えずに外を見たまま言った。
「斉藤さんには申し訳ないけど、電話しない方がいいかもしれない」
「えっ?」
「ダンナさん、斉藤さんよりも仕事の方が大切なんだと思うよ」
仕事の方が大切。
…私よりも。
そう思うと胸が痛くなった。悲しくなった。
でも…確かにそうだ。
今の仕事はコウの会社にとって大きなものだから。
コウはその責任を背負っている。
だから当然、私の事は二の次なんだろう。
そんなのわかっている。
でも…。
私は涙が出そうになるのを抑えながら言った。
「確かにそうかもしれないですね」
すると早坂さんはそんな私を見ながらクスッと笑うと顔を近づけてきた。
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