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「じゃあ行こうか」
早坂さんはそう言うと鞄を持つと席を立った。
きっと私がすぐにでもコウに電話したいと思って気を使っているのだろう。
それにコーヒーも既に飲み終えていてこれ以上ここにいる必要もない。
「あの…ありがとうございました」
私は早坂さんに合わせるように席を立つと深々と頭を下げた。
「お礼言われるようなことしてないよ。俺は斉藤さんと話せて楽しかったから」
早坂さんはそう言うと優しく微笑んだ。
その微笑みは優しく包み込むような温かさがあって。
この人は私とあまり変わらない年齢なのに…余裕があって大人で。
私の悩みを小さくして消してくれる。
…早坂さんに相談して良かった。
この人はやっぱりいい人だ。
だからさっき言った言葉に違和感を感じていた。
「早坂さん。私やっぱり違うと思うんです」
「えっ?」
早坂さんは私の言葉に驚いたのか動きを止めると不思議そうな顔で私を真っすぐに見た。
その顔は何を言うのか不安そうにも見える。
私はそんな早坂さんを安心させるようにとびきりの笑顔をすると言った。
「早坂さん、嫌な奴じゃないですよ」
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