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年明け私はコウと実家に挨拶に行った。
母親は温泉に行くから来ないでいいとは言ったけど、そうもいかないだろう。
だって結婚して初めてのお正月だし。
やっぱり年始の挨拶くらいはとコウと話していた。
だから温泉から帰ってきた頃を見計らって挨拶に行く事にしてた。
「別に来なくても良かったのに」
母親は「どうぞ」と言うと湯呑をテーブルに置いた。
その言い方はぶっきらぼうで愛想もないけど、でもどこか嬉しそうな顔をしている。
私は「本当は嬉しいくせに」と思いながらも嬉しさを隠そうとしている母親がどこか可愛く感じる。
でもそれを言ってしまうとプライドを傷つけてしまう。
だから私はわざと気がつかないフリをする。
「とりあえずね。それにお母さんだって寂しいかなって思って」
「寂しくなんかないわよ」
「わかってるけど、ほらこうしてコウも来てもらっているんだから」
私はそう言うとコウを指差した。
隣ではコウが静かにお茶を飲んでいる。
…おいおい。
なんで優雅にお茶飲んでいるの?
何か言いなさいよ。
私はコウが何も言わずに優雅にお茶を飲んでいる事に少しイラッとしていた。
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