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電話がつながると私は何故か緊張から抜け出せたような気分だった。
…きっと留守番電話だ。
だってもう10回はコールが鳴っていたんだし、コウは出れないんだろう。
とりあえず「お仕事がんばって」位のメッセージを残せばいい。
私は留守番電話のガイダンスが聞こえてくるのだろうと思っていたのに…。
電話の向こうから聞こえてきたのは、凄く聞きたかった声だった。
「もしもし?」
コウの声が耳元で甘く囁くように聞こえる。
「…」
私はまさか出るとは思っていなかったから驚いて何も言えなかった。
そんな私をコウは不思議に思ったのか、私の名前を呼んだ。
「ミウ?」
コウが私の名前を呼んでいる。
それだけで私の胸は嬉しさでいっぱいに満ち溢れていた。
家では寝顔だけど顔は見ているのに。
ただ数日、声を聞いてなかっただけなのに。
あんまりにも嬉しくて涙が出そうになってくる。
だからコウの名前を呼ぶ事で精一杯だった。
「…コウ」
「どうした?」
コウは私の声が聞こえて安心したのか、子供に話すように優しく言った。
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