1331人が本棚に入れています
本棚に追加
私はコウの「どうした?」の言葉に何て答えればいいのか躊躇していた。
だって電話の用件なんてないから。
声を聞きたかったから。寂しかったから電話した。
って正直に言えばいいのに、どこか恥ずかしくて。
だってまるで私だけが寂しがっているように思えてしまうから。
そんなのコウに知られたくない。
素直になれない私が嫌だなぁと思いつつ、適当に誤魔化す事にした。
「えっと…夕御飯食べた?」
「はぁ?まだだけど」
コウは私の言葉に呆れたのか拍子の抜けた声で答えた。
そりゃあそうだろう。久しぶりの会話が夕御飯食べた?なんか可笑しすぎる。
でも私にはそういう他愛ない会話の方が楽だった。
「ちゃんと食べないとダメだよ。夜中にお腹空いちゃうよ」
「わかった。なんか適当に食べるよ」
コウはそう言うと「フフッ」と笑った。
私は短い会話だけど満足していた。
…もう十分だ。
それにコウだって仕事を中断してくれている。
だからこれ以上長く話すのも申し訳ないと思い、電話を終わらせようと思った。
「うん、そうして。それじゃあお仕事がんばってね」
「ミウ」
電話を切ろうとするとコウは私を呼び止めた。
最初のコメントを投稿しよう!