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私はコウの反応が気になった。
何かコウらしくない。
だってコイツはいつでも余裕な顔をしていて強気でいるのに…。
家で仕事に対して愚痴を言わないのに。
私はくるっと向きを変えてコウと向き合うように体勢を変えた。
そしてコウを見つめながら言った。
「できたらってどういう事?」
「今回は数社での競合だから、まだ決まってないんだ」
「…そうなんだ」
「その会社からはいつも直接うちの会社に依頼がくるんだけど、今回は違ったんだよ。相手先も規模が大きいから慎重なんだろうな」
「そっか」
「だから会社としては競合に参加するか迷ってたんだよ。もし負ける様な事があったら、相手先との付き合いが変わっていく可能性もあるから会社としても慎重になるよな」
「うん。依頼が減る可能性もあるって事だよね」
「でも参加しないでいるのも結果として同じだから参加はする事になったけど、どうだろうな」
コウはポツリポツリと話す。
確かにチャンスではあるけど、会社にとってはリスクがある。
でもだからって参加しないわけにはならない。
コウはリスクを承知の上で大きな責任を背負っているんだ。
「そっか」
私はそう言うと真剣な顔のまま頷いた。
「まっ全力で頑張るよ。だからしばらくは忙しいと思う」
コウはそんな私を安心させるように微笑みながら言った。
その顔は責任から緊張しているのか私が知っているコウより引き締まっていて凛々しかった。
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