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「ねえミウ。左手出して」
「…うん」
私はそう言うと左手をコウの目の前に差し出した。
するとコウは箱から指輪を取り出すと、そっと私の薬指にはめる。
指にプラチナの金属の冷たさがひんやりと伝わってくる。
そして私の目の前に自分の左手を差し出すと言った。
「じゃあ次は俺にして」
私はコウの手を取ると指輪をはめた。
それはまるで誓いの儀式のように。
ここは観覧車の中なのに結婚式をしているかのように錯覚してしまう。
「うん。いいな」
コウは自分の左手を目の高さに上げると嬉しそうに言う。
その指輪の輝きは夜景の一部になってとても綺麗で、私はそんなコウに合わすように左手を上げた。
「うん。すごく綺麗」
コウはそんな私を優しく見ていたが、観覧車の今の位置がわかると外を見ながら言った。
「なあ、今さ一番上にいるんだけど、こういう時は何をするかわかる?」
「えっ?わからない」
私はコウの言っている意味がわからなくてポカンと口を開けていた。
するとコウは「フフッ」と微笑むと私に顔を近づけながら言った。
「キ…」
コウはいい終わる前には私の唇を塞いでいた。
それは強引で、でも優しくて。
私は唇に触れているコウの温かさを感じながら、そっと目を閉じた。
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