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パタンと玄関のドアを閉めるとコウはいきなり私をぎゅっと抱きしめてきた。
それがあまりにも急だったから私は思わず声を出してしまった。
「こ…コウ?」
「…ミウ」
コウは耳元で私の名前を呼ぶ。
その声は甘く優しくて。
その身体は温かくて。
でも腕の力は逃がさないように力強く、すっぽりと私を包み込んで。
私はこうしてコウと会えた事を実感していた。
ああ…夢じゃないんだ。
…コウがここにいる。
私を抱きしめてくれている。
ここが玄関でまだ靴も脱いでないのに私はもう既にコウの腕の中で蕩けていた。
玄関でしばらく抱き合っているとコウはスッと顔を離した。
そしてキスをする位近い距離まで顔を寄せてくる。
あ…キスするのかな?
私はそう思いながら目を閉じるとコウは呟くように言った。
「腹減った」
コウの言葉に私は閉じた目を開けた。
キスじゃないの?
腹…減った…って?
「えっ?お腹空いたの?」
「ん」
コウは私の問いかけに素直に頷く。
その言い方はまるで子供みたいで、私は思わず「フフッ」と笑ってしまった。
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