1304人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「…プレゼン、ダメだった」
コウの言葉が頭の中を駆け回る。
そんなはずないでしょう?あんなに頑張っていたのに。
私はコウが言っている事を信じられなかった。
でもコウの声はいつになく弱々しくて。
その顔は私を見る事なく宙を見ていて。
コウを見ていると現実だと思い知らされる。
…やっぱり本当なんだよね。そっかダメだったんだ。
こう言う時は慰めた方がいいと思うけど…いい言葉が浮かんでこない。
だから私はそんなコウをただ受け止める事しかできなかった。
「そっか」
「俺、クビかなぁ。ははは」
コウはそう言うと乾いた笑いをした。
その笑いから相当落胆しているのがわかった。
きっとコウはこういう経験をあまりした事がないのだろう。
それに今回のプロジェクトではメインで頑張っていたから、ショックが大きいのだろう。
でも、私はコウの頑張りをずっと見てきた。
サボってなんかない。全力でぶつかっていた。
結果はどうであれ会社はそれなりに評価するべきだ。
「そんな事ないって。コウ凄く頑張っていたじゃん。会社だってわかってくれてるよ」
「だといいんだけどな」
「大丈夫だよ。もし何か言ってきたら私が文句言ってやる。ぶん殴ってきてもいいよ」
「ミウらしい」
コウは私の言葉がおかしかったのか、そう言うと「フッ」っと笑った。
それは一時的なものかもしれないけど、コウが心から笑った顔を見るとホッと安心する。
最初のコメントを投稿しよう!