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「バーカ」
俺の話を最後まで聞くと電話の向こうの薫は吐き捨てるように言った。
普通だったら慰めてくれるような内容でもコイツは真逆な事を簡単に言ってしまう。
それはバカにした言葉で、普通なら嫌な気分になると思うけど。
聞き慣れている俺はそう思わない。
むしろストレートで気を使っていない感じが逆に面白くて笑ってしまう。
「相変わらずだな」
俺はそう言うと電話の向こうの薫の顔を想像していた。
きっと笑っている事もなく怒っている事もなく、普通の顔をしているのだろう。
…そう言う奴だからな。コイツは。
妙にさっぱりしているというか、竹を割ったような性格というか。
本当、女にしておくにはもったいなさすぎる。
コイツがもし男だったらもっと男同士の付き合いができるのに…。
いや…それはない。
きっと薫は男でも女でも同じだ。付き合いは変わらない。
薫こと石上薫(いしがみかおる)は大学の同級生で卒業してしばらく経った今も連絡を取り合っている数少ない友人だ。
コイツは女なんだけど女っぽくないって言うか…。
いや…見た目は十分に女性。
たぶん美人の部類に入る方だ。
黙っているとモテると思うが、話すと妙にサバサバしてて女性を感じさせない。
皆で飲んだ後に雑魚寝しても平気な女だった。
だから俺は男友達同様に会社の事、女の事と色んな事が薫には話せた。
でも…コイツはいつも話の最後に「バーカ」って言うんだよな。
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