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「てっきり他に彼女でもできたかと思えば、まだ人妻なんだ。夏に会った時から変わってないんじゃん」
そう。薫は夏の終わりに一度東京に遊びに来てくれた。
なんでもこっちにいる友人に会うついでに俺との時間を作ってくれたらしい。
その日は花火大会で華ちゃんに誘われていたけど、俺は薫を選んだ。
斉藤さんも来るから行きたいと思ったが、でも折角時間を作ってくれた薫に申し訳ないし、久しぶりに会いたいと思った。
その時に斉藤さんの事を話したんだよな。
あれから結構時間が経ったな。
「そうだよ」
「あんたも本当に好きなんだね」
「悪かったな」
俺は素直に認めた。
確かに薫の言う通りだ。
人妻に恋するなんて馬鹿げている。
相手には旦那がいるんだぞ。
仲が悪いわけでもなく、むしろ新婚でラブラブなのも知っている。
だからどう考えても振り向いてくれない事ぐらい重々承知だ。
もういい加減に諦めないといけないともわかっている。
正直社内で俺に色目を使ってくる人がいるのも知っている。
そう言う人と付き合った方がいいと思った事もある。
でもできなかった。
いつでも俺の心の中は彼女の笑顔でいっぱいだった。
…やっぱり俺って薫の言う通りバカなんだな。
俺はそう言うと「ははは」と乾いた笑いをした。
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