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「余り物だけど我慢してね」
私はリビングに入るとそのままキッチンに向かった。
そして大根と手羽先の煮物が入っている鍋に火をかけると沸々と煮立ってくる。
コウはソファに座るとネクタイを緩めながらぼんやりとテレビを見ていた。
それは何でもない風景だけど、しばらく一人の時間が多かった私にはとても幸せに感じる。
私はそんなコウを横目で見ながら話しかけた。
「コウはこの時間まで何も食べてなかったの?」
「サンドイッチ食べた」
「どんなの?」
「海老とアボガドのサンド。会社の近くのカフェで買った」
私は会社の近くのカフェと海老とアボガドのサンドと聞いた時点で何処のお店のかがわかった。
…それって絶対に最近テレビで話題になっている有名店だ。コンビニじゃない。
確かコウの会社の近くにあるって言ってた。
一度は食べてみたい!と思ってるのに…簡単に食べれて、あー羨ましい。
でも…そんな有名店の美味しいサンドを食べているのに私が作ったご飯を出してもいいのだろうか?
そんな大したものでもないし、食べてがっかりするかもしれない。
「う…それってあの有名店じゃん。そんなの食べた後に私が作ったの食べれる?」
「は?何言ってんの。食うに決まっているだろ。それにあの店それほど旨くないぞ」
コウは呆れた顔をするとに淡々と言った。
美味しいものを食べた後でも私が作った夕食を食べると言うコウが嬉しくて。
私は微笑むと鍋に視線を移しながら言った。
「ふーん。じゃあ文句は言わないでよね。あっ用意している間にお風呂入っちゃいなよ」
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