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ピピピピピ…。
ミウの唇が触れると思った時、アラーム音らしきものがけたたましく鳴った。
その途端、ミウはビクッと猫が驚くような仕草をしたかと思ったらすごい勢いで俺から離れた。
…な、なんだ!?
俺はその音とミウの反応に驚くと目を開けてしまった。
ミウは俺に背を向けると自分の鞄をガサガサしながら携帯電話を取り出し、じっと見ている。
さっきの大音量はどうやらミウのアラーム音で、解除をするのを忘れたらしい。
ミウは「はぁ」と溜息をつくと携帯電話をいじりながら呟くように言った。
「…もう。こんな時に」
俺はそんなミウの後姿を見ていたが、でも気分は冷静なんかじゃなかった。
頭がボーっとしてさっきの事が離れない。
ミウの肌の温度、唇に伝わってくる吐息。
全ての感触が生々しく残っている。
…寸止めっていやらしいな。
これだったら本当にキスしてしまった方が楽だったかもしれない。
だから今の俺の思考回路はショートしていて冷静さが失われていた。
いや、そんな綺麗な表現なんかしないでいい。
ただ興奮状態だった。
でもこんな状態をミウに見せるわけにはいかないし、寝ているふりも変だ。
あんなに大音量のアラームが鳴って気づかないもの変だろう。
だから俺は一息吐くと、できるだけ感情を抑えて、わざと今起きたかのように言った。
「何だよ。朝っぱらから」
ミウは俺の声にビクッとすると振り返った。
その手には携帯電話がしっかりと握られている。
するとミウは気まずそうな顔をしながら言った。
「あ…起きた?」
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