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「あたりまえだろ。あれじゃあ起きるって」
俺はわざと眠たそうに目を擦りながら言った。
それは今起きました、キスなんか気づいていませんって感じの顔をしているはずだけど。
でも自分で言いながらどこか面白く感じていた。
…「あれじゃあ」って聞き様にはアラームじゃなくてキスの事にも取れるな。
ったく表現が下手だなぁ。
まぁキスの事は俺から触れない方がいい。
きっとミウだって嫌だろう。
こんな寸止めで終わったキスの話をされるのは。
でもミウは俺が本当に気づいていないのか気になっているみたいだ。
「…コウあのさぁ」
そう言うとミウはしばらく黙った。
きっと何て言えばいいのか言葉が浮かんでこないのだろう。
「キスしようとしたけど気づいてた?」って言えないよな。
悪戯かもしれないけど、これは度が過ぎている。
俺だって「キスしようとしていただろ?」なんて意地悪な事言えない。
どう考えても意地悪にしか聞こえないし、もしそんな事を言ったら二度としてくれなさそうだから。
だから俺は「もうこの話は終わり」と言わんばかりにゴロンと横になりながら言った。
「まだ寝ててもいいよな…。ニ度寝する」
そしてミウに背を向けると、ミウは自分の布団に入って行った。
どうやら気づいていないと思ったらしい。
しばらくするとスースーと寝息が聞こえてきた。
俺はミウに背を向けながらずっと起きていた。
二度寝なんかできるはずがない。
ミウの肌の温度、吐息。
それらを思い出しては顔を赤らめていた。
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