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ミウは何も言わずに黙ったままただ理沙を見ていた。
その顔は見ているというかボーっと見とれているといった感じだ。
俺はそんなミウに声をかけた。
「おい。ミウ?」
「あ!小林美羽です。初めまして」
ミウは俺の言葉に「ハッ」とした顔をすると慌てて挨拶をした。
そしてペコリと頭を下げる。
理紗はそんなミウを微笑みながら見ていた。
その顔は微笑んでいるけど、ミウを見つめる瞳は笑っていない。
俺は理沙が何を考えているのか想像がついた。
さっきは素敵女子だと思ったが、やはり変わっていない。
微笑んではいるけど理沙の事だ、きっとミウを見定めているのだろう。
自分より劣っているか。理沙は人に対してはそれしか興味がない。
でもミウはそれに気がつかないだろう。自分が見定められているなんて。
きっと品のいい女だと思っているのだろうな。
俺は挨拶も済んだ事だし、もうこれ以上理沙と居なくてもいいと思った。
理沙とは久しぶりの再会だが特に話す事もない。
挨拶も済んだ事だし、欲しかった本は別に今日でなくてもいい。
早く帰れた時にでも寄って行けばいいから。
それに俺自体、理沙と一緒にいたくなかったし、ミウと理沙をこれ以上一緒にいさせたくなかった。
何もないとは思うが、嫌な予感が払拭されないからだ。
嫌な予感…それは会社を辞める時の経緯、俺との過去をミウに話されると思ったからだ。
その事はミウに話していないし、話すつもりもない。
ミウには永遠に知られたくない。
だから俺は早くこの場を離れたくてミウに「じゃあ行くか」と言おうとするとそれを遮るように理沙が声をかけてきた。
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