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「でも久しぶりね」
俺は理沙の言葉でミウに「じゃあ行くか」と言えなくなってしまった。
ミウを目の前にしてこのまま無視して帰れないと思ったからだ。
きっとミウの事だ「こうして話しかけられているのに失礼じゃないの」って怒りそうな気もする。
でも俺は理沙とあまり話したくないから、できるだけ早く終わるように手短に話す事にした。
「そうだな」
「そうそう。やっと会社も軌道に乗ってきたのよ」
「ふーん」
「まだあの会社にいるの?」
「ああ」
「そういう所、本当に変わらないわね。孝は」
理沙はそう言うと「ふふっ」と微笑んだ。
その視線は俺だけに向けられている。
もう理沙の視線にミウはいない。
それはまるでここには俺と理沙しかいない様にミウを置き去りにして理沙は話していた。
ミウは俺と理沙の会話を黙って聞いていた。
会社の話だから入れないのはわかっているが、もしかしたら気づいているのかもしれない。
理沙の態度に。
俺はミウを思うと申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
もう少しだから。適当な所で話を終わらせるから、もう少し待っていてくれ。
ミウには嫌な思いをさせてしまったから、帰りにケーキを買って帰ろう。
それともおまえの好きなゴジバのチョコレートでもいい。
とにかく今の俺は早く話を終わらせたかった。
すると話に割って入るようにミウが「あの…」と話しかけてきた。
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