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「奥さん帰っちゃったね」
ミウが見えなくなると理沙は眼をパチパチしながら拍子抜けした顔をしていた。
きっとミウが先に帰って驚いているのだろう。
「…」
俺はただ呆然とその場に立ち尽くしていた。
…たぶんミウは気づいている。
俺と理沙の関係を。
違う。違うんだ。
確かに関係はあったけど理沙に感情を持っていなかったし、結婚前に関係は終わっている。
それに俺が好きなのはミウなんだよ。
俺は頭の中で必死にミウに言い訳をしていた。
ここにミウはいないのに。
だから理沙の言葉は頭に入ってこない。
それでも理沙は気にしないで話を続ける。
「それにしても意外だなぁ。孝ってああいう人案外普通の人が好きだったのね」
「…」
「でも先に帰っちゃうなんて余裕?それとも孝に興味がないのかしら?」
理沙は意地悪そうに「ふふっ」と笑った。
俺は理沙の言う「余裕」が心に引っかかった。
…余裕?そんなのなんじゃない。
アイツは勘違いしている。
ミウを思うと胸がズキンと痛くなってくる。
今すぐにでもミウに会わないといけない。
ちゃんと話をしないと。
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