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「でも孝くんが来てくれて嬉しいわ。どんどん食べていってね」
小母さんはそう言うと嬉しそうに微笑んだ。
そして俺にやたらとおかずを勧め、ご飯のおかわりを聞いて来る。
俺はそんな小母さんに笑顔でこたえた。
「はい。小母さんのご飯はいつ食べても美味しいです」
この小母さんの振る舞いは幼い頃に母親を亡くした俺には、それが新鮮で嬉しかったりする。
家族ってこんなんだよな。
母親がいて、父親がいてみんなで食卓を囲む。
両親が亡くなってからはずっと婆ちゃんが面倒を見てくれたけど。
その婆ちゃんが亡くなってからは、こんな食事してなかったな。
いつも一人で、家でコンビニ弁当食べて。
まぁ仕事してたし、一人暮らしってこんなんだって思ってたからな。
だから余計、家族での食事が楽しくて嬉しく感じる。
そして食事も終わりに近づく頃、小母さんは時計をチラッと見るなり言いだした。
「ねえ、もうこんな時間なんだし今日は泊っていったら?」
「えっ?」
ミウは小母さんの言葉に驚いた顔をした。
帰るって言っていたから泊まるつもりはなかったのだろう。
でも小母さんはそんなの関係ないと言わんばかりの顔をしている。
「いいじゃない。もう遅いし」
「泊るって、コウのパジャマ持ってきてないよ」
確かにミウの言う通りだ。
俺も泊まるとは思っていなかったから、着替えを持ってきていない。
それを理由にして帰るつもりだな
でも小母さんはそんなミウの言葉に「うふふ」と嬉しそうに笑った。
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