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「それがねぇ。あるのよ」
小母さんはそう言うと不適の笑みをした。
ミウはそんな小母さんの心理がわからないのか不思議そうな顔をしている。
「あるの?」
「お母さんねぇ、孝くんの着替え買っておいたの。いつお泊まりになってもいいようにね」
「そうなの?あ…そういやこの前コウの服のサイズ聞いてたよね?」
「そう。あなたに聞いてすぐに買いに行っちゃったわ」
この会話から小母さんがミウに俺の服のサイズを聞いて、買いに行ったのがわかった。
それにしても小母さんのこの顔、恋する乙女のように目をキラキラさせている。
きっと店で着替えを選んでいる時も楽しかったんだろう。
考えてみると小父さんが亡くなってから男物なんて必要ないから買わないもんな。
…まっいいんじゃねーの。
こんなに嬉しそうな小母さんを見ていると、今日は素直に泊ろうと思えてくる。
だから俺は何としても帰ろうとしているミウの顔を見ながら言った。
「まっいいんじゃねーの?今日は泊って行こうぜ」
「そうだね」
ミウは俺の言葉に拍子抜けした顔をすると肩を落とした。
でもそれはがっかりしているようではなく、ホッとしているようだ。
きっと俺に気を使ってくれていたのだろう。
いきなりのお泊まりで戸惑っていると思ったのだろう。
何としても帰らないと、泊まれないって。
だから俺が泊まるって言って嬉しかったんだろうな。
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