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するとミウの不思議そうな声が聞こえてきた。
「でもなんでここにいるの?」
…なんでここにいるの?…かぁ。
まぁミウからしたら変な話だよな。
会社に行ったはずの俺が家にいるからな。
でも…そんなこと聞くなよ。
理由なんて一つしかないだろ?
「なんで?ってお前が具合悪いだからだろ」
「うん…そうだけど。でも会社は?」
「早退した」
「早退?」
「朝一にどうしても抜けられない打ち合わせがあったから、それだけ出て帰ってきた」
「大丈夫なの?」
「俺の仕事は家でもできるから後でやればいい。っておまえがそんな心配しないでいいんだよ」
俺はミウが仕事を心配していると思うと「ふふっ」と笑ってしまった。
そう。仕事なんか心配するな。
今日の打ち合わせさえ終わればあとは何とでもなるんだから。
それよりもおまえが心配だ。
「…うん。ありがと」
ミウは恥ずかしそうに言うと黙ってしまった。
俺も何を言えばいいのか言葉が浮かんでこない。
だから何も言わずに黙っていた。
抱きしめるミウの体は温かくて、その沈黙は何故か心地よくて。
俺はこのまま時間が止まればいいと思った。
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