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「孝、私…」
理沙はそう呟くと手を伸ばし、俺の肩を触ろうとしてきた。
きっと愕然とした俺を哀れに思ったのだろう。
もしかしたらミウを探すと言うのかもしれない。
でも俺はもうコイツとこれ以上関わりたくなかった。
「触るな!もういいっ!」
俺はそう言うと理沙の腕を払った。
理沙は払われた腕をもう片方の手でギュッと掴むと寂しそうに俺を見た。
その表情は許してと言っているようにも見える。
けど、俺の心はもう戻る事が出来ない。
「もう二度と俺とミウの前に姿を出すな。おまえの事は一生許さない」
俺は言い捨てると会社へと戻っていった。
その夜、俺は家に帰ると携帯電話を手にしたままソファーに座っていた。
理沙から真実を聞いた今、どうしても気になっていた事があったからだ。
今回の理沙が仕組んだ罠。
これに俺とミウはまんまと嵌まってしまった。
いわば理沙の勝ちだ。
でもこの罠、理沙一人でやったのだろうか?
コイツは頭がいいが、実際に一人でやれるような女じゃない。
きっと共犯者がいるはずだ。
そんなの一人しか考えられない。
だから俺は今、その共犯者に電話を掛けようとしている。
俺はそいつのアドレスを探すと「はぁ」と一息置いて発信ボタンを押した。
するとそいつは慌てる事無くゆっくりとした口調で電話に出た。
「そろそろ掛けてくる頃だと思ってましたよ」
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