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「何で…?」
俺は高科の言葉に絶句した。
だってコイツからそんな素振りを見た事なんかない。
いつも先輩先輩って俺の後をついて来ていた高科に不幸になればいいって…。
どうして高科はそう思っているんだ?
すると電話の向こうから高科の声が聞こえてきた。
「僕は先輩、あなたが大嫌いだった」
高科は迷いもなく真っ直ぐに声のトーンも変えずに言っている。
俺はそんな高科の話に何も言えなくて、ただ聞くしかできなかった。
「…」
「僕がどんなに頑張っても理沙さんはあなたの事ばかりで、僕に振り向いてくれない。でもあなたは他の人と結婚してしまった。あなただってわかっていたでしょう?理沙さんの気持ちを」
「…」
「理沙さんも結婚すれば諦めると思っていたのに、あの二人は偽装結婚だからと言って諦めようとしないし」
「…」
「僕は一体なんなんだろうと思いましたよ。でもその時に思ったんです、みんな不幸になればいいって」
「…」
「だから今回の計画を立てたんです。理沙さんに協力して先輩夫婦を離婚させる。でも先輩は理沙さんのもとへは行かない」
「…」
「だって先輩、奥さんを愛していますもんね」
高科は最後に「これが僕の復讐です」と言い、高々に笑った。
俺はその笑いを聞きながら、もう何も言い返す事が出来なかった。
理沙への憧れからくる俺への憎悪。
これがコイツの心を歪ませてしまった。
でもそうさせてしまった責任が俺にもある。
俺が高科の気持ちを重く受け止めていればこんな事にはならなかったんだ。
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