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「か、カンケーないしっ!別にいーじゃないですか、デレだろーがなんだろーがっ」
「田辺にしか見せない顔って、どんな顔?…ちょっと、してみてよ」
「…しないよ??…あんたの前でするわけないじゃん絶対しないし!!ていうかそんなお手軽な顔じゃないかんね、言っとくけどっ」
「…見たいな」
寂しそうにボソッと呟く。
「そらっ!…自分こそ、普段は憎たらしいくせにそーやってごくまれに可愛い感じポロっと出してキュンを誘うの、止めてくれるっ!?
この卑怯ものっ!」
「あ、奈良崎。お客さん、呼んでるよ、ほら」
先生はそう言って、たった今入って来たばかりの新規の客の方を指差した。
「ツンのほうを多目でね」
「ああ、分かったさ!わかってますよっ。
わたしの仕事っぷり、しっかりと目に焼き付けておいてくださいねっ、センセ!」
彩加がキーーーッ、という顔をして、オーダー用紙をがしっと掴み、お客さんの方に向かって大股で歩いて行った。
……田辺くんしか知らない彩加の顔って、どんななんだろう……。
想像してドキドキしながら、呑気に彩加の背中を見送っていると…。
突然、腕を掴まれ、くいっと引っ張られた。
ぱさ、と暗幕が視界を覆い、目の前が真っ暗になる。
…えっ…。
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