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一瞬の間の後、少しだけ暗闇に目が慣れると、…先生が、二重になった暗幕と暗幕の間にわたしを引っ張り込んだのだという事に気付いた。
声を出す間もなく、唇が塞がれる。
強引に身体を引き寄せられ、いつになく強く唇を吸われると、思わず声が洩れそうになる。
すぐ傍を、誰かの足音が通り過ぎた。
…ダメ、ばれちゃう…。
それでも先生は、角度を変えて、今度は舌を深く挿し込んで来た。
水音を立てないように、じっくり這うような動きで舌を絡める。
息を殺して交わすキスは、いつもよりも妖しく、わたしの胸の奥を疼かせた。
充分に深いキスをしているのに、…もっと、深く繋がりたい。
身体が内側から熱を帯びて行くような、不思議な感覚。
先生の手がペチコートの下に潜り込み、じっくりと太ももの後ろを撫で上げていく。
その焦れったさに、わたしは思わず身体を反らせ、先生にすがりついた。
…先生…。
丁寧に、ゆっくりとわたしの舌を吸い上げてから、先生は顔を離した。
髪をかき上げ、顔を寄せて、耳をぴちゃ、と舐める。
じわりと痺れる甘い感覚に、わたしは唇をかみしめ、何とか声を堪えた。
「…可愛すぎ。…このまま、連れて帰りたい」
ボソ、と耳元で囁かれ、…再びゆっくりと唇が食まれたと思うと、唐突に、先生の身体が離れた。
伸ばした手が空振りして、すでに暗幕の中から先生の姿が消えている事に気付く。
取り残された暗闇の中から、慌てて布を掻き分けて顔を出すと、部屋から出て行く先生の背中がチラリと見えた。
遅れて響き始めた鼓動と、熱くなる頬。
「ええー、紅茶―?…淹れるのめんどくさいんだよね。二人ともコーヒーにしてくれると楽なんだけど」
彩加の投げやりな言葉に、じゃ、それでいいです、と嬉しそうに答える、お客の声が聞こえた。
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