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 渡り廊下を突き当たり、左に折れようとして、わたしは咄嗟に身体を引いた。  …今のは…。  もう一度、そおっと覗いてみると、…放送部室の前で、向かい合う二つの影。  …更科くんと月子ちゃん…。  遠すぎて会話の内容は聞こえないけれど、その深刻そうな様子に、何となく足を踏み出すタイミングが掴めない。  …迷子放送の当番だし、早く放送部室に行かないと…。  素知らぬふりで出て行こうかどうしようか、迷っていると、…更科くんが手を伸ばし、月子ちゃんの身体を抱き寄せた。  …あ…っ。  わたしは急いで首を引っ込めた。  やがて、月子ちゃんが啜り泣く声が小さく聞こえてくる。  …うーわー…。これは…さらに出て行きづらい状況…。  わたしがどうしたものかと困り果てていると、渡り廊下をドカドカと歩く振動が伝わって来た。  そして、威勢のいい大きな声。 「…あれえ?椎名。何やってんの、こんなとこでコソコソと隠れちゃって」 「……」  ――田辺くん……相変わらず、現れるタイミング……。  わたしはあちゃー、とおでこに手のひらを当てた。
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