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 ジュワー、という大きな音と白い湯気を立て、生地が鉄板に流し込まれる。  生地の入ったポットを脇に置き、春山先生は目の前に並んだボウルに手を伸ばした。  キャベツ、青ネギ、天かす、紅ショウガを順番に、手早く散らしていく。 「椎名、タコ」 「はいっ」  タコ係のわたしが、鉄板の熱気にびくびくしながら慣れない手つきでタコを入れ終えると、先生はサンキュ、と言って、手拭き用のウエットティッシュを手渡してくれた。  わたしはさっきから、たこ焼きの焼け具合よりも、先生の横顔の方が気になって仕方がない。  …カッコいい。  Yシャツ姿にエプロン掛けて、たこ焼き焼いてる姿がこんなに絵になる教師って、世間広しと言えどもこの人くらいなんじゃ…。 「300円になりますっ。はーいっ、毎度ありがとうございますっ」  向かいの販売ブースからは、威勢のいい声が響いて来る。  見ると、なぜかまだウエイトレス姿のままの彩加が、手際良くたこ焼きを売りさばいていた。  昇降口に続く通路の脇に、ずらりと張られたテント群の下では、先生と手伝いの生徒たちが、せっせと焼きそばや磯部もちなどを焼いていた。  売れ行きは上々で、販売ブースにはかなりの人だかりが出来ている。  他の先生方の手付きもなかなか鮮やかなもので、鉄板での手慣れたヘラさばきに、わたしは先程から感心させられていた。 「そろそろかな」  春山先生は、傍の缶の中に立ててある竹串を一本、手に取った。
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