1170人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「七不思議喫茶でーーーっす。よろしくおねがいしまーーーっす」
人混みの中、飾りつけを施された校門の傍で呼びこみをする、ウエイトレス姿のトモコ。
後ろから近づいて行くと、やけに鼻にかかった声が耳に入って来た。
「映画『学園七不思議』上映中でーーーす。美味しいお飲み物もお出ししてまーーーす」
よく聞くと、声は掠れ、息も切れ、かなり疲れきっているのが分かる。
わたしと彩加は顔を見合わせ、苦笑した。
「トーモコッ。お疲れさま。交代の時間だよっ」
彩加がポン、と肩を叩くと、トモコは限界越えの顔で振り向いた。
「…よ、良かったあ、…あと5分で電池切れするところだった…」
膝に手をつき、身体を屈める。
衣装の短いスカートの裾が持ち上がり、ペチコートのフリルが丸見えになったので、わたしは慌ててトモコの後ろ側に回り、裾を押さえた。
「がんばったね、トモコ。…あれ、マリは?」
「そうそう!!聞いてよっ」
トモコは泣きそうな声で言った。
「カレシが来たとたん、ちょっと抜けるね、とか言って、手つないで消えちゃったんだよっ!!わたし一人残して、酷いと思わないっ?」
文化祭初日の土曜日。
10時の開門と同時に、校内はたちまち、たくさんの一般客で溢れ返った。
まだ午前中だというのに、スタートからなかなかの賑わいを見せている。
最初のコメントを投稿しよう!