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私は震える手を抑えながら携帯電話を耳から離さなかった。
プルル…プルル…プルル…。
コールを鳴らしても電話に出ない。
呼び出し音だけが虚しく聞こえてくる。
高科さんはそんな私を面白そうに見ていた。
私は高科さんの視線とずっと鳴り続けているコール音に不安で胸が張り裂けそうになる。
…コウ。お願い!早く出て。
すると私の願いが通じたのか電話がつながった。
大好きなコウの声が聞こえてくる。
「もしもし。ミウ?」
コウの声はいつもと変わらずで、私はコウが電話に出てくれた事にホッと安心した。
と同時に不安感が消されて体中の力が抜けていく。
…良かった。
「…コウ」
「どうした?」
「ん…あのね…」
…言葉が浮かんでこない。
ホッと安心した今、頭が真っ白になって何て言ったらいいのかわからない。
でもだからって高科さんにコウが理沙さんと会っているって聞いた…ってそんなの言えない。
きっと「なんで高科に会っているんだ?」って言われる。
もしかしたら気分を悪くするかもしれない。それは避けたい。
だから私が何と言えばいいのか迷っていた。
すると電話の奥から別の声が聞こえてきた。
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