私があなたにできる事

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「孝?どうしたの?」 私はその声に愕然とした。 だってその声は数時間前に聞いてるから誰だかわかる。 …理沙さんだ。 理沙さんの声が頭の中を駆け回る。 それは甘ったるくて。 でも大人のしっとりとした色気もあって。 声の大きさから近くにいや、密着する距離にいるのがわかる。 …高科さんの言う通りだ。 理沙さんは沖縄に行ってコウに会っている。 そしてこうして今、一緒にいる。 それはベッドの中かもしれないし違うかもしれないけど、二人でいる事は間違いない。 私は二人が一緒にいると思うと落胆した。 いや…失望の方が近いかもしれない。 それにあの理沙さんの声。 私の知っている理沙さんから想像できない位に甘い声だった。 きっと二人は甘い時間を過ごしているのだろう。 そっか…。 私と生活しながら心で理沙さんを想っていたんだ。 だからこうして二人で会っている。 私にわからないように沖縄でこそこそと。 そうだったんだね。 てっきり私を選んでいると思ってたのに…なんか可笑しい。 可笑しすぎてバカらしく感じてきた。 もういい。 もういいよ。コウ。 私は「ふぅ」と溜息をつくと冷静にゆっくりと言った。 「あ…ごめん。何でもないんだ。それじゃあね」 「ミウ?」 コウの私を呼ぶ声が聞こえていたけど、私は一方的に電話を切った。
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