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高科さんはコウに電話している間、遠慮してか私を見ずに自分の携帯を見ていた。
いや…この人は遠慮なんかするはずがない。
ただ興味がないんだ。
結果がわかっていた事なんだから。
そして電話が終わると同時に携帯をテーブルに置くと私を見ながら言った。
「これでわかりましたよね?先輩はあなたと結婚していながら神野さんと会っていた」
「…」
私は何も言わずにただ高科さんを睨んでいた。
高科さんを睨むのはお門違いかもしれない。
でも二人が会っているのを知った今、私の心は悲しみに近い怒りでいっぱいだった。
だから私はこの気持ちをどうかしたくて目の前にいる高科さんを睨む事しかできなかった。
そんな私を高科さんは気にせずそのまま淡々と話し続ける。
「あなたが認めたくない気持ちは分かりますが、これが真実です」
「わかっている。もう嫌って程思い知らされた」
私は口を尖らせながら言った。
そんな私を見ながら高科さんは「ふふっ」と笑った。
「そうでしょうね。あなたの顔を見ればわかります。でもどんな状況でも電話に出る先輩はやっぱりあなたが大切なんですね」
「嫌味?」
「そうじゃなくて感心しているんです」
「あっそ」
私はそう言うと顔を背けた。
感心していると言われても嬉しくない。
だってコウはこの結婚を自分から終わらせられないから。
初恋の人である私を傷つけたくないから。
そんなのわかってる。
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