私があなたにできる事

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「せーんぱい。今度ゴジバが会社の近くにオープンするらしいですよ」 華ちゃんはそう言うと雑誌を私の前に広げて嬉しそうに言った。 それは無料で配布されているタウン誌で会社近辺が特集されている。 その雑誌に載っている店は世界的に有名なチョコレート専門店で、私はここのチョコレートが特に大好きだ。 私がチョコレート好きだと知っている華ちゃんは見つけるなり真っ先に伝えてくれる。 でもコンビニとは違いそこで売っているチョコレートは一粒200円近くする。 だからそういつも食べれるものではないんだよね。 「あっ!それも新作だって。うーん美味しそう」 華ちゃんはその雑誌に載っている新作チョコレートを指差しながら言った。 その顔はいつもの元気のいい華ちゃんで、昨日の出来事も嘘だったんじゃないかと錯覚してしまう。 まるでいつものように二人で飲みに行ったかのように。 でも本当は行ってない。 行く途中、目の前に理沙さんが現れたから華ちゃんには先に帰ってもらった。 だってこんな所見せたくなかったから。 きっと華ちゃんはそんな私達のただならぬ雰囲気に違和感を感じたはずだ。 この人何?って。 だから今日はその話で持ちきりだと思ってた。 私の知っている華ちゃんだったら必要以上に聞きたがるのに。 聞かれたらちゃんと答えようと思ってたのに。 華ちゃんは何も聞いてこなかった。 きっと私に気を使ってくれているんだろうな。 私は「美味しそうだね」と言いながらも心の中では華ちゃんに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
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