997人が本棚に入れています
本棚に追加
あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。
長かったのかもしれない、短かったのかもしれない。
気がつくと止まる事を知らなかった涙もいつしか止まり、目の周りが渇いていく。
そしていつしか呼吸も落ち着いていく。
早坂さんはずっとその間ただ黙って私を抱きしめていてくれてた。
「…すいません。やっと落ち着きました」
落ち着いた私は早坂さんから離れようと身体を動かした。
でも早坂さんは私を離さないように抱きしめる腕に力を込める。
「早坂さん?」
私はあまりにも強く抱きしめられた事に驚くと目を見開いた。
そして顔を上げようとするが早坂さんの胸に押し付けられたまま動く事が出来ない。
私はどうしたらいいのか戸惑っていると早坂さんの声が聞こえてきた。
「ねえ斉藤さん」
「はい?」
「俺はもうすぐ仙台に戻る」
「…」
「でも今の君を置いて仙台に帰る事は出来ない。俺は君が好きだから結婚していても旦那がいても君が好きだ」
「…早坂さん?」
「だから仙台に…一緒に行こう」
そう言うとやっと早坂さんは私を解放してくれた。
私は少し離れると顔を上げた。
顔を上げてみた早坂さんの顔は真剣で私だけを真っすぐ見ていて。
これは嘘じゃないんだと思った。
最初のコメントを投稿しよう!