私があなたにできる事

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「今すぐの返事しなくていいから。ゆっくり考えて」 私を見送ると早坂さんを乗せたタクシーはマンションの前から遠退いて行った。 結局その後、私達は同じタクシーで帰る事にした。 方角は全然違うけど、早坂さんは私が心配だったのか「送るよ」と言うと同じタクシーに乗り込んだ。 そしてマンションの前に着くと私がエントランスに入るまで見ていてくれた。 私は家に帰ると真っすぐコウの部屋に行った。 そしてカバンごとベッドにごろんと横になると目を閉じた。 目を閉じると今日あった出来事が走馬灯のように流れていく。 沖縄でコウは理沙さんに会っていた。 あの電話口に聞こえてきた甘い声。 忘れたくてもどうしても頭から離れない。 コウが選んでいたのは私ではなくて理沙さんだった。 そしてボロボロになった私を早坂さんは助けてくれた。 心配して会社からついて来ていた。 好きだと言ってくれた。 一緒に仙台に行こうと誘われた。 色んな事が起こりすぎて頭の中が整理できない。 「もう何が何だか分からない」 私は天井を見ながら呟いた。 するとカバンから聞きなれた着信音が聞こえた。 その音にビクッとなり慌ててカバンから携帯電話を取り出すとディスプレイに「コウ」と表示されている。 私は携帯電話を持ちながらその電話に出るべきか迷っていた。 理沙さんを選んだと知った今、何を話せばいいのかわからなかったから。
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