997人が本棚に入れています
本棚に追加
「えー…と。コウの声が聞きたかったの」
私はコウの勢いに対して紛らわすように言った。
「ふーん。そっか…って何であんな切り方すんだよ」
コウは一瞬納得したような反応を見せたが、さらに突っ込んできた。
「だって…」
私はそう言うと唇を尖らせた。
高科さんから話を聞いたよ。
理沙さんと一緒にいたんでしょ?
それに電話の向こうから理沙さんの声がしたよ。
私知っているんだからね。
と言葉が次々と浮かんできたけど、それが声になる事はなかった。
グッと堪えた訳でもない。
これを言う事でのコウの反応が怖かったからだ。
でもそれなりの返事をしないとコウは納得しない。
だから私は精一杯の遠回しな言い方をした。
「誰かいたんでしょ?」
私はそう言うと黙った。
その言い方は遠回しなんだけど、含みがあって自分で言いながらズルイと思った。
まるで「知っているんだよ」って言ってるように思うかもしれない。
コウ、ごめん。私ズルイから。
臆病者だから自分から聞く事が出来ない。
だからコウから理沙さんと会ってた事を言って欲しい。
コウからの言葉なら、どんな理由でも…受け入れるから。
私は黙ってコウの返事を待った。
最初のコメントを投稿しよう!