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すると躊躇うようなコウの声が聞こえてきた。
「ああ…会社の仲間と飲んでたから」
そう言うコウの声はどこか浮ついているように聞こえて。
でもこれ以上突っ込む事ができないように心に重く響いて。
私はその返事にコウの本質を聞けたように思った。
会社の仲間と飲んでたから…て。
ねえコウ。それ…嘘だよね。
だって理沙さんの声しか聞こえなかったよ。
他の人の声なんか聞こえなかったよ。
やっぱり理沙さんの名前は出さないんだ。
私に気を使ってくれてるの?
そうだよね…私に隠れて会っていたんだもんね。
だから言えないんだよ。私には。
ねえコウ。
コウはいつだって私に気を使ってくれるよね。
そんなにこの結婚生活が大切なの?
私は結婚生活も大切だけどそれ以上にコウが大切なんだよ。
コウが私を幸せにしてくれたように。
私もコウには幸せになって欲しい。
だから理沙さんの事も気づかないようにできる。
「会社の人…そっかどうりで色んな人の声がする訳だ。あはは」
私はコウの返事に適当に合わせると笑った。
可笑しくないのに笑った。
笑いながら私の心はある決断をしていた。
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