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「もしもし」
私は携帯電話を耳元にあてるとできるだけ動揺を感じさせないように冷静に言った。
コウはその私の言い方、声のトーンからきっと電話に出れない状態だと思ったのだろう。
電話の向こうから遠慮気味な声が聞こえてきた。
「ミウ？今電話して大丈夫だった？」
「あ…ごめん。テレビに夢中になってて電話気付かなかった」
私はそう言うと「あはは」と乾いた笑いをした。
本当は違う。コウと話す自信がないから電話に出たくなかっただけ。
でもそんなの言えない。
だから適当な理由で誤魔化した。
「ったくしょうがねーな。で、昨日はどうだった？」
「えっ？」
コウの言葉に思わず絶句してしまった。
昨日って…理沙さんと会った事を知っているの？
私が何も言えないでいると電話の向こうからコウの呆れた声が聞こえてきた。
「えっ？って華ちゃんとの飲みに行ったんだろ？」
あ…そうだ。
コウには華ちゃんと飲みに行く事を伝えていたんだ。
その事を聞いているんだ。
…良かった。
私はコウが理沙さんと会ったのを知らない事に安心した。
だから行った事にして話を流した。
「あ…そう。うん。楽しかったよ。コウは？」
「まあまあだな。飯は普通だったし、そうだな…田中が酔い潰れて大変だった」
コウは昨日の事を思い出したのか「ふふっ」と笑った。
確か田中さんも一緒に出張に来ていると前に聞いていた。
でも私は「そっか」と深追いする事なく軽く聞き流した。
いつも飲み会となれば「ご飯は何を食べたんだ？」とか「田中さん大丈夫？」とか根掘り葉掘り聞くけど、そんな気分ではない。
コウはそんな私の反応を不思議に思ったのか、心配そうに言った。
「ミウ。何かあった？」
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