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それからコウは毎日のように電話をくれた。
毎日コウの声を聞いていると、どこか安心している自分がいて。
それは他愛のない話だけど、心地よくて。
その心地良さが理沙さんに会った事を言いづらくしていた。
だからといって話をしない訳にはいかない。
明日、理沙さんと会ってから1週間を迎える。
確か「1週間考えて」と言ってたから何らか連絡があるはずだろう。
携帯電話の番号を教えているからきっと携帯に電話があるはずだ。
でも臆病な私はどうしても理紗さんに会った事を話す気にはなれなかった。
まだ怖いと思う気持ちが大きい。
でもコウの夢に対する気持ちも知りたい。
だから理沙さんの名前は出さずに話を切り出した。
「ねえコウ」
「ん?」
「もしさ海外での仕事があるって言われたらどうする?」
「何それ?」
「だからもしもの話」
私はそう言うとコウが何と答えるか黙って待っていた。
すると少しの間の後にコウの声が聞こえてきた。
「そうだなぁ。いいチャンスだし受けるかもな」
私はコウの返事を聞いてやっぱりと思った。
そうだよね。
今までその為にずっと頑張ってきたんだから。
だからそう簡単には飽きらめないよね。
「…そうだよね。コウの夢だもん」
「まあな」
そう言うコウの声はどこか希望に満ち溢れていて。
きっと目をキラキラしながら話しているんだろうなと思うと複雑な心境だった。
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